縦の構図と光とそのディテール、カッコよすぎる

rimg00072東京都写真美術館にてジャンルー・シーフ展を観た。開催期間は2010年3月27日から5月16日。過去に観た作品展がいつだったかは覚えていないが、書棚の写真集は何度も見返している。今回の展示は撮影年順に展示されており観やすかった。ほとんど縦位置の構図でそれは雑誌媒体の仕事も多かったせいもあろうが、基本的には被写体との距離感を重視するスタイルのせいであろうと思う。時代的な背景はヌーベルヴァーグと平行しておりモデルにもその筋の人も少なくないが、今回の展示ではその辺りの作品は少なかった。
ヌーベルヴァーグの「ロケ撮影中心、同時録音、即興演出」の、録音を除けばモデル撮影はそれと同じと考えられなくもない。シーフの写真の魅力は街角のスナップ作品でもドキュメンタリズム作家の写真とは違うものに感じられる、それはヌーベルヴァーグを背景とする所以だからだろうか。

しかし今回の展示でアメリカの現代絵画の影響を受けたのではないかと思われる作品もあり興味深く観た、アンドリュー・ワイエスの「クリスティーナの世界」に似た構図の作品があった。「クリスティーナの世界」はポリオで足が不自由なクリスティーナが母親の墓に這いつくばって行く姿を描いた作品だが、それを彷彿とさせるモデル写真があった。絵画は横位置だがシーフの写真は縦位置で当然モノクロなのだが、モデルが丘陵で這いつくばり腕だけで起き上がり身をよじるそれはまさにクリスティーナであろう。オマージュと観るか影響を受けていると観るかは意見が別れるところか。

広角系のレンズを使用したスナップは退屈な風景も躍動感を表現でき、素人もコツを掴めば「面白い写真」に整えやすい。しかしシーフの写真は同じ広角系のレンズでありながらも、躍動感よりも絵画的な魅力を伝えてくる。人物は点景や身体の一部だけが写り込み砂や草や建築物で構成され、人物とのカラミがモードになりポートレートに変わる。
自然光または自然光に近づけたライティングで、執拗にディテールにこだわった写真も多い。女性モデルの肌や陰部や手脚や髪などを追いかけ、光とプリントの覆い焼きなどで絵を仕上げる。被写体の本質に迫ろうとするとディテールの描写になっていくのは写真家としての性であろうか、メイプルソープのそれは退廃的な光に包まれているが、シーフの写真はあくまでファッショナブルでモダニズムが感じられる。

光と構図とディテールに重点を置いた写真はファッション写真でありながらも「流行」のためでなく不変の美を追求していたようにも思える、それ故に時代を超えて高いファッションセンスを伝える作品たりえているのかもしれない。いずれにしてもカッコ良すぎる写真は永久に私の前を走り続けている。

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